【完】君の笑顔
「どうして清水先生の手術を嫌がるんですか?」
「それが理由を聞いてもただ嫌って言うだけで教えてくれないんだ。
いつかは手術は受ける、って言ってるんだけどね」
「そうですか……」
「ま、高橋君が担当になれば執刀も高橋君になるだろうし……一応頭に置いておいてくれ」
ポン、と肩を軽く叩かれて隣の清水先生は立ち上がった。
……岡本心。
その子は、すぐに問題児ぶりを発揮し始めた。
「先生、また心ちゃんが……」
「また?」
ハァーとため息を吐く清水先生を見ながら、僕は机の書類に目を通す。
入院してからと言うもの、すっかり体調を回復したらしい岡本さんは抜け出している。
いつも抜け出す為、看護師さんも清水先生も対応は慣れているけれど……。
何故抜け出そうとするのか僕には分からない。
中学生だから、外で遊びたいのだろうか?
何をするために病院を抜け出すのか。
どうして手術を受けることを拒否するのか。
若くて回復力も早いうちに手術して治した方が絶対に良いと思うのに……。