SAYONARA
「お願い。聞いて」

「聞いてって、まさか愛子はあいつのこと好きなわけ?」

 必死に顔の前で手を合わせる彼女に冗談めかしていった。彼女は違うと強い口調で言うのだと思っていた。だが、彼女はほんの少し頬を赤らめる。

「うん。かっこいいよね。優しいし。ちょっと恋愛とかに鈍そうなところがまたいい」

 功がかっこいい?

 思いがけない言葉に戸惑い、彼女を凝視する。

 子供みたいに好奇心旺盛で、純真で、背も小さくて、かわいいなら分からなくもない。だが、かっこいいなんて言葉は似合わない。

「お願い」

 彼女があまりに必死に頼むので断れなくなり、流されるようにうなずいていた。かっこいいなんて彼女の戯言だと思っていた。
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