深想シンドローム


―――それは、一年前。


当時から巷で有名だったミチルくんは、北高の人たちから目を付けられていて。

ただ普通にヤルよりは、と北高が狙ったのは体育祭当日だった。



無数のバイクに
金属バットを振り回す男たち。

それらに占領されたグラウンドは当然、体育祭どころじゃなくなる。

もちろん、ミチルくんを狙ってるんだということも、学校側にもバレて。



「多分、エースは自分のせいだと思ってるんだと思う。」

「…そんな、」

「ああ見えて、エースは人情深い人だから。」



一生懸命みんなで準備した、体育祭。

無関係の人たちの怪我。


…ミチルくんは、どんな思いでいたんだろう。




「本当はね、そこで退学になってもおかしくないんだけど。」


そこで出て行ったのがミチルくんのお姉さんだった、と西くんは言う。



お姉さんは校長先生に

『退学にはしないで欲しい』と土下座して頼み込んだらしい。


留年してでも、何でもいいから高校だけは卒業させたいんだ、と。



「そこで、退学の代わりに出された条件が…、」


1年の留年と

全ての行事の“不参加”だった。







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