王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
 月光の下、輝く銀の髪をなびかせて去る後姿を見送って、夢心地のままため息をついた少女に声がかかる。

「サハナ、こんなところで何してるんだ? 探しただろ」
「アウル?」

 闇の中から現れたのは、20代にはまだ手が届かぬ風の茶色かかった黒髪の青年。鍛え上げたと思しき身体は人並み以上に成長しているが、顔立ちには幼さが残る。
 サハナの幼馴染、<森の民>のアウルである。

「なあ、さっきすっごい綺麗な銀髪の人がいたよな」
「あっ、サレンスさん」
「そうか、サレンスさんというのか、遠目でよく見えなかったけど、美人だった?」

 アウルの問いかけにサハナは眉をひそめた。
 幼馴染の様子はいつもと変わらないと言うのに、何故だかわからないが苛立たしい。
 サレンスとの出会いの余韻を壊されたせいだと自分を納得させながら、敢て明るく言う。

「そうねー。すっごく美人だった」
「ああっ! なんで引き止めておいてくれないんだよ。お近づきになるチャンスだったのに」
「あんた、そういう趣味だった?」
「そういう趣味って?」
「だって、サレンスさん、男だよ。オ・ト・コ」
「なんだ、男か」

 がっかりした様子を隠しもしないアウルに、さらに苛立ったサハナは追い討ちを掛ける。

「素敵な人だったわよ。わたしのこと可愛いって」
「は? お前が可愛い? どんな趣味だよ」
「何よ、それ。サレンスさんはとっても素敵な大人な男の人よ。アウルみたいな子どもとは大違い」
「俺のどこが子どもだっ!」
「そういうところがよっ!」
 
 中空に浮かぶ満月が西に傾きかけていた。
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