王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
「なん、気に入らへんの?」
「当たり前だろう。せっかく、ご婦人たちといい雰囲気になったと思ったら、湧いて出てきては、この私を単なる商品見本扱いだ」
「そうか? なんや取り囲まれて困とったようにみえたのになあ」
「君に困ったんだ」
「それは悪かったな。次はもう少し見計らってやるから、よろしゅう頼むな」
「まだやるつもりか。次はないからな、次は」
「なんや、おもろないなあ」

 二人のやり取りを黙って見守っていたレジィだったが、必死に吹き出すのをこらえ、ついにはセツキの背中に顔を埋めて笑い声を押し殺していた。しかし、肩が小刻みに震えていては、ばればれである。

「なん、笑っとるん」
「何を笑っているんだ?」

 期せずして言葉が重なった二人にレジィはさらに息も絶え絶えに笑った末、言い放った。

「だって、サレンス様を、手玉に取る女性って、貴重です」
「手玉って、あんさんもなかなか容赦ない子やなあ」
「レジィ、それは彼女に失礼だろう」

 サレンスにたしなめられて、ようやく笑いを収めたレジィは素直に謝る。

「そうですね。お姉さん、ごめんなさい。で、サレンス様はよかったですね」

 レジィの予想外の言葉にサレンスは蒼い眼を瞬く。

「なにがだ?」
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