境界上
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この男、どこまで卒がナイのかしら。


苦手どころか“ド”を付けても過言ではない、
“ストライク”な店選び。


恐らくは、うちの部に顔を利かせたついでに“骨を折って”仕入れた情報なんだろうけれど。


(流石に3年も同じ部署に居れば、部内でそれなりに個人情報も流出している。)


……ああ、でも。

この会社の人間は基本、滅多と他人に深くは干渉してこないから、
肝心の“恋愛事情”を彼が知れたかは微妙なところだろうか。


まぁとにかく。

ある程度のリサーチを済ませているのはまず間違いない。


ソファに腰をおろしニッコリ微笑みながら返事を待つアタシに。

彼はん―、とわざとらしく悩んだ後、覗き込む形で同じく、ニッコリと“微笑返し”して答える。


「まあ多少はね。けど……
俺、“予習の範囲外”でも矢沢さんを満足させる自信あるよ」



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