境界上
.


思えばそれは、出社してすぐのエレベーターから始まっていた。


「ねぇ、矢沢ユイってあの人だよね?」


初めは特に気にも止めていなかったメス共の耳打ち。


が、デスクに座るなり


「矢沢? ああ、右手前のデスクに座ってる子だけど」


コピーをとるなり


「彼女でしょ? 矢沢さんって~」







……いい加減、鬱陶しいわ。



まぁ、だいたいの察しはついている。


これ見よがしにぶつけられる、好奇と棘が入り混じった視線と。

恐らくはわざと聞こえるように囁かれている同じワード。



自慢じゃないが、こういった事態は過去にもたっぷり経験済みだ。


ただ。


「あの営業部の2人って超犬猿の仲だしぃ」


「いつかはやると思ってたけどさ」


「流石に今朝のアレはね~」



もしかしなくても、ミオのお節介はド真ん中にクリーンヒットだったのかも。




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