市立青い空学園

転校生1 教室編

教室はざわめきに満ちていた。新聞部の輝かしい実力―主に盗聴―により約1週間前から知られていた噂の転校生。
美形の男子生徒で、水泳が得意らしい。しかも身体は引き締められており、見る人が見れば涎が出るほど。
女子からは黄色い声が、男子からは赤黒い声が上がっている。そんな中、2人の男女は違う話しで盛り上がっていた。男子の方はスポーツ刈りで制服は襟のホックまで留めている。目付きは鋭く、纏う雰囲気もどこか鋭い。
女子の方は黒髪ポニーテール。目付きは緩く、制服の上にセーターを来ていて、男子とは反対の雰囲気を出している。
女子は黒板の上に掛けられている時計を見る。
時刻は9時10分。教壇に居るべき人物は未だ来ない。
女子は隣で椅子に座っている男子に話しかける。

「先生また遅刻だね、これで2週間連続だよ。転校生が来る日なのに。どうするクラス委員」
クラス委員と呼ばれた男子は隣に立つ女子の頭に手を置くと、心配ないと言い、
「どうせまた何かやらかしたんだろ。この前は機嫌が良いというだけで走行中のトラックの前に飛び出して、あなたは死にませんと、断言したみたいだしな」

クラス委員はそう言うと腕を組み、天井を見上げ、しばらく考え、再び女子に向き直る。

「今日の転校生についてもっと詳しい話しは何もないのかな、新聞部期待のルーキー君」

言われた女子はポニーテールを大きく揺らしながら頷くと、セーターの内側に手を入れる。彼女が常に手帳を忍ばせていることを知っているクラス委員はそれを待ち、期待は裏切られた。

「はいこれ」

新聞部期待のルーキーが出したのは、箸とフォーク。満面の笑顔で差し出された物をクラス委員は受け取り、振り向きもせず真後ろに放り投げる。直後、

「きゃー!田中君の耳たぶにフォークが!フォークがー!」

「なんで!なんでこんなところにフォークが!」

「馬鹿!救急車早く呼べよ!消防車じゃねえよ!救急車だよ!」

「元気だなぁ」

クラス委員は田中君に心の中で謝罪をし、新聞部期待のルーキーに再び言う。

「今のはなんの冗談だい?」

女子は驚いたという顔で少し考え、再び笑顔。

「ナイフとフォークだね?」

直後、廊下から何か倒れる音が響いた。
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