大空の唄

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─その頃の俺らはまだ普通の高校生だった



「すっげー人…」


近所の小さなホールの舞台裏


たくさんの人を前に俺たちの
緊張はどんどん増していく


普段偉そうな空の顔が
ひきつってしまうくらい


「空、緊張してんのかよ?
だっせーな」


「あ"ぁ!?
お前こそ声震えてんじゃねーか」


だから緊張を紛らわす為に
わざと歪み合ったりした


その日は近隣の高校生が集まって
定期的に行われるライブの日で


俺たちも知り合いに勧められて
出演することにしたのだ


人前で歌うことは初めてではなかったが
こんな大勢の前で歌うのは初めてだった


額に滲む汗を拭う


『では、次は期待の新星
"SONG OF SKY"のみんなだー!』


聞いたことのないようなバンドの登場にさえ
歓声が上がるほど会場は沸いていた


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