大空の唄


蒼空はパッと掴んでいた手を離しその手をそのまま頭に移動させると


ぐしゃぐしゃっと髪を掻き乱した


たぶんウィッグであろう黒髪が少し乱れる


「お前は世間知らずのガキだな」


「何で?」


友達とはぐれたからって今の話で何故そこまで言われなきゃならないの?


そんな疑問を込めて蒼空を見るとびっくりしたような


呆れたような顔をされた


「お前あのまま連れていかれてたら
どうなってたと思ってるんだ?」


あのまま連れていかれてたら?


あたしは頭を捻って考える


先輩たちのところに行ってた?
でもあの人たち先輩たちのこと知らない
って言ってたし…


いいとこに連れて行くって言ってたっけ?


いいとこって…


「はぁ聞いた俺が馬鹿だった」


あたしの思考を遮るように蒼空が頭を抱えて俯く


「言えばあれはナンパ!

分かる?ナンパ

しかも一人で困っている女のコに
付け込んでくる最悪なタイプ


あのまま連れていかれてたら
まずお前の身の安全は保証出来ない


なのにまんまと騙されて着いていきやがって


運よく俺が見つけたから良いものの
俺がいなかったらどうするつもりなんだよ!?」


声を荒げる蒼空の目をジッと見つめて


あたしは愕然とする


やっとあの人たちの目的に気付いたのだ


気付いてしまったあたしに今さら恐怖心が芽生える


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