大空の唄


「ごめん、蒼空
ごめんね…」


泣きたくないのに自然と涙が溢れてきてあたしの視界を歪ませた


何で気付かなかったんだろう


何で怪しまなかったんだろう


自分の注意力の無さが悔しかった


あたしは涙を隠すように俯く


「心配かけてごめん…」


そう呟くと同時に何らかの力であたしの重心が前に傾き


ポスッと温かい壁にぶつかった


それが蒼空の胸板で


何らかの力を加えたのは


まだ私の後頭部に添えられた蒼空の手だと把握するのに


そんなに時間はかからなかった


「バーカ!ごめんじゃなくて
ありがとうございますだろが」


つか今さら泣くなよ馬鹿
最後にそう付け足す


「バカバカ言うなっ!」


そう反抗するものの涙は余計に量を増すばかり


蒼空の優しさが今はとても心地よかった


「蒼空、ありがとう」


「ふん…


つかお前先輩たちとはぐれたって
電話も繋がらなかったのか?」


電話…あ…


あたしはバッと顔を上げ鞄から携帯を取り出す


"着信 10件"


「携帯の存在を忘れてた」


「はぁ!?」


その後蒼空の説教を食らったのは言うまでもなく


連絡するために急いでかけ直した電話で美咲に説教されたのも言うまでもない


それでも波乱万丈な先輩や美咲とのライブは


無事幕を閉じたのだった…


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