大空の唄


「おかえり!」


扉を開けるといつものように
笑顔で出迎えてくれる陽くんと翔くん


ついこの前まで夢のようだったこの生活は


今では当たり前のようになってきている


「ただいま…」


みんながいて楽しくてあたしの居場所があることが嬉しかった


「どうしたの?元気ない?」


「あーまた空に何かいわれた?」


翔くんが蒼空を横目で見ると


蒼空は大きくため息を着いた


「何もしてない
つか、またってなんだよ?」


あたしが、答えが出せなかったもう1つの理由…


それは…


「あのね、あたし…もう…


ここには来れないかもしれない」


先輩と付き合うことは


同時にこの時間を失うことだと思ってしまったから


「えっ…?」


翔くんと陽くんの声が重なる


「あたしね、先輩に告られたんだ


だから……」


先輩に告白されたとき、一番に思い浮かんだのは


4人で楽しく過ごした時間だった


「まじで!よかったじゃん絢音ちゃん

もうOKしたの?」


「まだ、明日言おうと思ってる

だから、今までありがとう」


ぴょんぴょん跳ねて喜んでくれた陽くんの顔から


"今までありがとう"の言葉で笑顔が消えた


「なーに言ってだよ!

先輩と付き合い始めたって
もうここに来れなくたって
俺たちは友達だろ?

また、いつでも遊びにおいで」


翔くん…


あたしは笑顔で頷いた


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