大空の唄


「何かいろいろあったでしょ?
その時海斗が


『俺、最悪なことした
ほんと自業自得だけど
また裏切られるのかな?』

って言ってた。だけどそれでも
自ら手離すことは出来なかったみたいでね」


あたしはただ…ただ…
サユリさんを真っ直ぐ見て


話に耳を傾ける


「絢音ちゃんがまた二股かけるような子だったら


あたしは絢音ちゃんのこと
ひっぱたいてたかもしれない」


サユリさんはニッと意地悪に笑った後
一呼吸おいて話を続けた


「でも、絢音ちゃんは違った

ちゃんと自分の気持ち言って
海斗と向き合ってくれた

だから、海斗も辛かったけど
嬉しかったみたいだし

絢音ちゃんの幸せを
素直に応援できたんだよ」


少し、沈黙が流れた


そしてサユリさんはあたしの目を真っ直ぐ見つめると


「ありがとう、絢音ちゃん


海斗を救ってくれて」



サユリさんの笑顔を見た瞬間


胸がいっぱいになって


溢れた思いの変わりに目頭が熱くなって


涙が溢れだした


「あたし…なにも…何もしてないです…」


途切れ途切れに言葉を繋ぐ


感謝されるようなことは何もしていない


「したよ。海斗これでまた
人を信じられるようになると思う」


サユリさんはそんなあたしの頭を優しく撫でてくれた


先輩、ごめんなさい


そしてありがとう


今なら素直にそう言える気がするよ


ううん、絶対に言える


そう言いきれる


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