大空の唄


「サユリー絢音ちゃーん

遅いよ!早く早くー」


少し遠くから元気な声と共に
大きく手を振るユウカさんが見えた


「もー何してたの?」


近くに行くとユウカさんは腕を組み頬を膨らませている


「内緒、ね?」


サユリさんはクスクスと笑って
あたしの方を見ると再び


ね?と首を少し傾けた


「は、はい」


慌てて首を縦に振るあたしを
ジーッと見つめていたユウカさんは


「何なの!?超気になる!!」


そう言って足をバタつかせた


ふとユウカさんの奥にいる先輩に視線が向く


すると、偶然先輩と目が合った


正直さっきの話のあと先輩と目を合わすのは気まずい


…というか恥ずかしい


けどあたしはその目を反らさなかった


そして先輩に歩み寄ると


「先輩。いろいろごめんなさい


あと…」


ザーッと風が吹き
まだ咲かけの桜の枝が揺れた


先輩はいつまでもあたしの憧れで
あたしにとって大切な存在で…


いろいろあったけど
いっぱい辛かったし
いっぱい傷付けたけど


先輩と出会えてよかったって
胸を張って言える


「先輩。ありがとうございます」


微笑むと先輩も優しく微笑んで


優しく頭を撫でてくれた


「俺こそ。ありがとう…絢音。」


先輩も、あたしと同じ気持ちだったら良いな


「絢音ちゃん!海斗ー!

記念に写真撮ろう!!」


気が付けば桜の木の下に移動しているユウカさんが叫ぶ


「おぅ!

行こう…」


「はい!」


もうすっかり空気は暖かくなり桜が今にも満開になりそうな


春の日の午後。


写真に写る先輩もあたしも…みんなの笑顔が


幸せそうだった


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