大空の唄


「なぁ…陽…」


少しぎこちなく包丁を使い料理をする陽は笑顔でこちらを見て首をかしげた


最近は俺のマンションには帰ってない


陽か翔の家を行ったり来たり


今日はたまたま陽のところに来ていた


「俺たちって何で音楽始めたんだっけ?」


売れるためか?


有名になるためか?


それとも…


縛られるためか?


その問いに首を傾げたままの陽は、うーんと唸るような声を出した



「空は音楽を始めたこと後悔してる?」


疑問を疑問で返された


俺は少し頭を抱える


「後悔はしてない

ただ…」


ただ…


「してなかったら普通に静かに、ひっそりと生きられたのかなって思うと…少し…そんな生活に憧れる」


誰かに干渉されることも縛られることもなく


ただ自由に生きてみたかった


< 227 / 378 >

この作品をシェア

pagetop