大空の唄


“信じて?”そう言おうとしたあたしの言葉は


いとも簡単に遮られた


あの時とおんなじ


蒼空に思いを告げた、あの時と…


「何で蒼空君はいつもあたしの言葉を遮るかな?」


強がってそう呟くけど


内心、悲しんでるんだから


あたしは俯いた


「信じるとか…

信じるとか簡単に言うなよ」


え?


蒼空の言葉に俯いていた顔を上げる


さっきと正反対に真っ直ぐあたしを見るその目は


あたしを拒絶する目だった


「信じるってことは
裏切られるっていうリスクを
背負うってこと…」


そんな蒼空の目見たくないのに


そらしたくてもそらせない…


「信じてなんてそんな簡単に言うなよ

俺はそんなリスク背負ってまで
誰かを信じるつもりはない」


その瞬間堪えていたモノが
一気に溢れだした


「蒼空のバカ…」


それだけ言うのが精一杯だった


あたしは走って蒼空の横を通り過ぎ
勢いよく部屋を出た


言いたいことはもっと
もっといっぱいあったのに


何も言えなかった



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