大空の唄



「梶原梨華さんって梨華さんのことだったんですか?」


「そうよ

結婚して姓が櫻木になったの」


あたしは、納得して拳でポンと掌をたたく


これで今まで疑問に感じていたものの大半が解決された


蒼空がなぜ梨華さんに対してあんな態度なのか


なぜ梨華さんが蒼空をよろしくと言ってきたのか…


今更ながら自分の鈍感さというか
どんくささにため息がでる


そしてあたしは残りの疑問も解決しようと口を開く


「蒼空はなぜ梨華さんのもとでバイトを?」


その瞬間、笑顔だった梨華さんの表情が一気に重いものになった


あたしは慌てて口を抑える


聞いてはいけないことだっただろうか?


触れてほしくないところだったのだろうか?


「あ、無理には言わなくても…」


「それも含めて話そうと思うの
絢音ちゃんには蒼空の全てを知る権利がある」


あたしの言葉を遮るように告げられたセリフ


全てを知る権利?


「どういうことですか?」


「今、あの子を救えるのは絢音ちゃんしかいないと思うの
蒼空もあなたの助けを待ってると思う

重荷を背負わせるようなことを言ってるは分かってる

でも、お願い。私には救えない
翔斗と陽平にも救えない

私たちは蒼空の1番じゃないから」




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