大空の唄


「ずっと謝りたかった」


そういうとあからさまに蒼空が顔を歪める


「何を…?」


そう問われるが、その言葉の意味を蒼空が理解していることはすぐに分かった



あの時の罪悪感と、やっと伝えられる嬉しさが混ざり合ってうるさいくらい鼓動が高鳴った。


あたしは一呼吸おいてゆっくり口を開いた


「何も言わずに去ってしまったこと」


そう言うと蒼空の表情が更に固くなった気がした


あの時本当は1言だけでもアナタに伝えたかった


“さようなら”と“ありがとう”を


例えそれが仮に永遠を指すさよならだとしても…


だけどあまりに突然の出来事だったため無力だった私に成す術はなかった


あの頃の私は文字も、そしてアナタの名前すら知らなかったのだから


「ずっとずっと後悔してきた

あの頃のことなんてほとんどが曖昧になってしまっているのに

あの日の後悔とこのメロディーだけは…いつになっても鮮やかにあたしの胸の奥に焼付いていた」



そして、それは今も変わっていない…




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