大空の唄




─お前もそう思わねぇ?


扉を開こうとした手が止まる


行き場を失った手は無意識に下がって行って…


「思わねぇ…」


俺は振り返らずにそう言った…


「アイツ能天気で馬鹿だから
そう思う気持ちは分かるけど

俺らの孤独も苦しみも
俺らにしか分かんねぇよ…」


人の痛みなんてその本人しか分からない


それを分かったように言うのは


ただの同情だ



それに……


「あんま信じすぎんなよ。

あいつのこと…」


俺は付け足すようにそう言って再びドアノブに手をかけた


どんなに信じていても


信頼出来る人であっても


裏切られる可能性は0%じゃない


「本当にそんなこと思ってんのかよ?」


ずっと黙りこんでいた翔が口を開いた


「じゃあ空は何でそれでも


絢音ちゃんを突き離そうとしないんだよ?」

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