カウントダウン・パニック
「それから最後に本城江梨子(ほんじょうえりこ)ですが、本城はもともとはオペラ歌手だったそうです。」
「もともと?」
風間は言葉の突っかかり聞き直す。
「はい。本城は今日この会場に来ている花房歌劇団の団員だったんです。」
すると藤森は再びパソコンに指を滑らす。
「しかし一年前、突如引退してしまったんです。世間にはなぜ引退したかは公表されていないのですが、一番有力とされている原因は今日エリーザベト役で出演している遠藤朋華(えんどうともか)と当時何らかのトラブルがあったという事だけです。」
藤森はパソコンに表示された、当時本城が出ていたオペラのポスターのページを風間に見せる。
「トラブルの内容は未だに分かりません。ただもし本当に遠藤とのトラブルが原因なら当時花形だった本城は自分を引退に追いやった遠藤の事を恨んでいるでしょう。」
「こっちはライバル同士の僻みか?」
風間はホワイトボードに本城江梨子と書いた。
「しかしこの中でみると輿水と本城は個人に恨みを持っているのに対して沢登と久宝はこの劇場自体に恨みがある。現時点ではこの二人がもっとも怪しいが…」