クールな王子様
そぉーっと、手を近付け、望月の髪にもう少しで触れるという時。
「はい…、終了。」
ビクッ
いきなり、望月が言葉を発したので、驚いてさっと伸ばしていた手を戻した。
あ、あぶねぇ……。
ふわふわとさらさらの
誘惑にのるとこだった…!!!
「…唯璃?」
「ぇ?!あ、ありがとね!!」
そう言うと何故か保健室がしん…と静かになった。
嫌な沈黙じゃないけどなんとなく、落ち着かない。
それに、聞こえてくる自分の心音がいつもより速い気がする。
な、なんなの……?
私、緊張してる?
いや、何にだよ?!
自分にノリツッコミをしながら、なんとなくさっきのようにキレイな望月の髪に目をむけた。
日が傾いたせいか、望月の髪は、オレンジ色の光を浴びて透きとおるような栗色になっていた。
…こういう纏っている雰囲気とか全部で、望月は王子って言われるんだろうな…。
最初は会ったこともないし、全然信じてなかったけど…
うん、これは王子様だよ。
さっきから下をむいて黙っている望月を見ながらそんなことを思った。
「……望月……。」
「…ん?」
さら……────
小さく名前を呼んで、そのキレイな髪に触れてみた。
「っな?!唯璃?!」
「望月は…、やっぱりすごいな。
私じゃ…届かないくらい。」
驚いて目を見開いた望月に、そう言った。
望月は…すごいよ。
容姿はもちろんだけど。
なんだろう……
私なんかより、
ずっと、ずっと…すごい。
そんな気がする。
きっと、
なんでもできるんだろうな。
羨ましい。
ただ、ただ羨ましい。