あなたに触れるとき

§2

俺、石塚海斗(いしづかかいと)は後悔している。
何故かって?それは今日の天候が最悪だからだ。
「さみぃ・・・・・・」
今は何月だ?俺の記憶だと10月の半ばだと思うぞ?そしてあれだ、確か今日の昼は20℃は越していたぞ?
薄い長袖のTシャツに黒いダウンのベストにジーパン、靴はつい最近買ったばかりのピンクと黒のハイカット。下はいいが上(というか腕)が問題だ。
町の中心から少し離れた住宅街は明るくはなく、ぽつぽつそびえ立つ街灯が頼りなさげに道をてらしている。
ビュオォと嫌がらせのように吹く風は冷たく、さらに俺を攻撃する。あぁ、こんなことならコンビニで肉まんとか買っとけばよかった。
目的地である石塚家はこの町で三本の指に入る高さのマンションで、視界には入ってはいるのだが、まだいくらかの距離があった。
「ぬわぁー・・・」
イライラする。寒いし暗いし、あぁさっき肉まん想像したら腹まで減ってきたじゃねぇかコノヤロウ。
(・・・走るか)
絶対疲れるとは思うが体は温まるし家にも早く着ける(寒さも限界だ)。
たん、とステップを踏んでからマラソンより少し速いペースで走りだす。
運動能力は他の人よりはあるほうだし、走るのにも結構自信はある。体力面には少々不安だがそれでも何だかんだで500メートルも無い距離まで縮まっていたので予定通り行けるだろう。
タッタッタッとリズミカルに走りながらそういえば冷凍庫にかっちんこっちんな肉まんがあったなー、なんて考えていたら目的地まではあっという間だった。
正面玄関の数十メートルのところで減速し、息を整えるためにゆっくりと空を仰いで深呼吸。なんで深呼吸をする時上を向くのかと問われれば、まぁ癖だからしょうがないだろと胸を張って答えてやろう。
「おょ?」
空を仰いだ一瞬、上空でちかりと光が瞬いた。
よくよく目を凝らすとマンションの屋上で何かが動いた・・・・・・気がした。いやぁ、こんな暗いし、しかもあんな高いとこマサイの方々じゃないと見えないって。
「・・・・・・行ってみよ☆」
走って体がポカポカしてたのと謎の好奇心で、外がめちゃ寒いことなんて忘れ、気付いたらエントランスに設置されてるエレベーターを目指して足が動いていた。
< 2 / 3 >

この作品をシェア

pagetop