傷だらけの僕等
「先生…。」


はっとしてあたしは自分の喉を押さえた。


「声…出てる…?」


間違いなくあたしの声だった。

久しぶりすぎる自分の声に戸惑いを隠せない。

あたしの体は、まだ声の出し方を知っていたらしい。


「なんで…?あたしの声…。」

自分でもよく分からなかった。

でも、昨日確かにあたしは声が戻ってほしいと願った。

それが原因…?
そんな単純なこと…?


自分の声を聞いて思い出す。

いよいよ来たのだと。

「リミット」が。

「ありがとう」

と一緒に

「さよなら」

を言わなくてはならない時が

来たのだということを。

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