傷だらけの僕等
「あたしが13歳のときだから中学1年か…
新しい父親が来た。
それが今の父親。
母親も少しは落ち着くかと思ったのに、違った。
1ヶ月ぐらいして、母親は帰ってこなくなった。
つまり、体よくその男にあたしをなすりつけて自分は自由の身になったわけ。
ある意味、父親も被害者だよ。
結婚詐欺。」


彼女の態度は話し始めるときから何一つ変わらなかった。

泣くかとも思っていたけど、涙一つ見せない。

涙を堪えている様子もなかった。

ただ淡々と、記憶のままに話している。

その記憶に痛みを感じていないみたいだった。

それとも傷つきすぎて、痛みを忘れてしまったのか?

俺にそんな錯覚を起こさせる。

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