傷だらけの僕等
「優しさには対価が必要だってこと。
あたしは、彬の優しさがとにかく嬉しすぎて彬の本心を読み取れなかった。

彬と出会ったころのあたしはあたしを人間として扱ってくれる人に飢えてて、あたしはすぐに彬に懐いた。

父親がいないときはすぐに彬に会いに行った。

でも、彬が優しいのは2ヶ月くらいだった。」


彼女の言葉の先にある現実が見えた気がして、俺はますます言葉を失った。

「あの日、あいつは出張で夜もいなかった。
だから彬に呼び出されるまま、あたしは飛んで行った。

場所はあの公園で、彬以外に男が3人。
彬の顔が父親の顔と同じになってた。

そしてあたしの体の汚れは増した。

でも、彬が悪いとは思わなかったよ。」

「なんで?」

「彬は優しくしてくれたから。
その対価を、あたしは体で払っただけだから。」

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