傷だらけの僕等
「え…何?」

「泣いて…いいよ。もう。」

「え…?」

「もう…泣いていいんだよ。先生。」

「だから…涙は出なかったって言ってるだろ?」

「うん。聞いてたよ。
あの時は、悲しすぎて泣けなかった。
だから、残ったままなんだよ傷が。」

「……。」

「今日の朝…
先生に…泣かせてもらえて、あたしは救われた。
だから…あたしも先生を救いたいよ。」


彼女の瞳は真っすぐ俺を見据えていた。

涙で潤んでいたけど、その真剣な眼差しは少しも揺るがなかった。



だから逆に俺が揺らぐ。

< 164 / 317 >

この作品をシェア

pagetop