ラヴレス
『―――チスミ、という少女を捜してきてくれないか』
病床にて叔父が必死に語った声が蘇る。
『私が愛した人の、大切な娘…』
キアランは、大好きな叔父の為に約束をしたのだ。
必ず、『チスミ』を見つけ出して叔父上が願うように、幸せにすると。
(…そうだ、)
―――『チスミ』の発音が難しくて、何度も何度も、イトコと練習したのに。
「…チフミ、じゃない」
キアランは漠然と呟いた。
「チスミ、だ……」
その時、珍しく焦った様子の秘書がキアランを呼びに来たのだった―――。