ラブ☆ヴォイス
「なななななっ…なんでこんなとこに…?」
「噛みすぎなんだけど?」

 笑いを噛み殺しながらあっくんがそう言った。本物はやはり唯の想像以上にイケメンだった。黒くて短い髪に大きい目。もしかしなくても自分よりは数倍大きい。身長だって唯よりも20センチは高い。

「ってか俺のこと顔見ただけで誰か分かる人、いるんだなー。」
「だって…有名人だもんっ!」
「そりゃどーも。」

 …何かがおかしい。なんだかちょっと違和感がある。なんだろう…普段のあっくんはもっと…。

「もっと優しいイメージ…。」
「はぁ?」

 今のは幻聴だろうか。唯の知るあっくんは少なくとも「はぁ?」などとは言わない。

「わわっ!なんでもないですっ!」
「とりあえず紹介はいらないみたいだな。お前、俺のこと知ってるみたいだし。一応、隣人ってことでよろしく。」

 確かにいい声だけれども、唯のイメージとは大幅にずれたあっくんがそこにいる。最初に浮かべていた笑顔はいつの間にか消え去っている。それでもやっぱり目の前に大好きな人がいる喜びは収まってくれない。

「夢みたい…。」

 思わず口をついて出たのは、あまりにメルヘンな言葉だった。

「はい?」
「だって…だってあのあっくんがお隣さんだなんて…。」
「あ、お前、なんか口軽そうだけど言いふらすなよ。色々と面倒だから。」
「言いふらしたりなんかしませんっ!」
「あっそ。ならいいけど。じゃ。」
「あっ!待って!」
「なんだよ?」

 怪訝そうな顔をしたあっくんが唯の目の前にいる。…待ってよ。あっくんってこんな人だったっけ?

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