ラブ☆ヴォイス
「うーん…なんだろな…顔は普通、だし…。あ、料理!味は最高!」
「味はってなによー!あっくんのバカ!最低!」
「はぁ?お前こそ声だろ声!声優の声がいいのは当たり前だっつの!お前がいう声っつーのはな一般人で言うところの顔と一緒だぞ?」
「だって…特別なんだもん、あっくんの『声』…は。」

 そう。あっくんの〝声〟は特別。唯にとっては恋の始まり。
 初めてあっくんの声を聴いたのは、『白き旋律』というアニメのヒロインのお兄さん役だった。ヒロインとお兄さんは再婚した両親の連れ子同士で、なかなか心を開かないヒロインの心を『ピアノ』を通じて溶かしていったのがお兄さんだった。もう亡くなっているという設定だったから、出番はすごく少なかったけれど、でも初めて聴いた瞬間のことを唯ははっきりと覚えている。
 柔らかくて、温かくて、優しい声。本当に目の前に『お兄さん』がいるような、不思議な感覚。
 鳥肌が立った。全身がぞくぞくして、単純に、素直に…この声、すごく好きだってそう思った。
 それから、あっくんが出演しているアニメは片っ端から探して。洋画の吹き替えも観た。ナレーションをしている番組も。
 それぞれの作品の中に、それぞれの色をしたあっくんがいて。『ミドソラ』のあっくんがとても素のような気がして。あっくんの色を知れば知るほど、もっと知りたくなった。隣に引っ越してくるなんて…思ってもみなかったけど。

でも…ものすごーく、ホントに言葉で言い表せないくらい嬉しかったんだよ。
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