ラブ☆ヴォイス
「ってタツが言ってた。」
「え?空野さんが?」

 意外な人物の登場に少し驚く。

「なんで分かった?俺の声が変だって。」
「直感みたいなものだけど、いつもよりもちょっと掠れるときが多い気がして…。」
「勘かよ。他にねぇのか。」
「すっ…好きだから!好きだから分かったの!」
「はぁ?」

 一気にあっくんが訝しげな表情を浮かべる。そんなに露骨に嫌そうな顔しなくたっていいはずだ。

「あっくんが好きだから分かるの!あっくんにとってはちっちゃい変化かもしれないけど、あたしにとっては大きな変化なの!」
「俺の『声』が好きなんだもんな。」
「声も大好きだけど、声だけじゃないもん好きなのは。」
「そーかよ。…つーかそろそろ学校行けよな中学生。」
「あたしは中学生じゃなくて女子大生だってば! ってやばっ…遅刻する…!行ってきますっ!」

 唯はぐるんとあっくんに背を向けて走った。
 食べさせてもらっちゃったなんて思うと、顔が熱くなる。本来はそんなことを考えてる場合ではないのだけれども。一度大きく頭を振って、とにかく時間に間に合うことだけを考えてひたすら走った。

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