ラブ☆ヴォイス
 額へのキスは終わりの合図だった。

「ヤキモチ妬くと、こうなるぞ?」
「…じゅ、じゅーぶん、わかりました。」
「俺的に、これ以上ないってくらい愛したつもりだけど。」
「…これ以上ないくらい愛してもらったなって…思います。」
「余すところなく舐めた。」
「っ…そ、そんなことは言わなくていいっ!言われなくてもっ…。」

 『わかる』と言いかけて、唯は口をつぐんだ。あっくんに乗せられて、思わず恥ずかしい言葉を言ってしまいそうになることは度々あった。今日もまさにそのパターンだ。

「言われなくても、なに?」
「っ…言われなくても、だい、大丈夫。」
「言われなくてもわかる、だろ?あんだけ感じれば。」
「だからっ!それを言わないでってば!」
「わかったわかった。俺も今日はやりすぎたし、もうやんない。寝よ?」
「…うん。」

 あっくんの強い腕がもう一度唯の方に伸びてきた。背中からぎゅっと抱きしめられると、ドキドキもするけれど、落ち着きもする。
 疲れがじわりじわりと唯の身体を支配する。少しずつ瞼が下がって、完全に意識が飛びそうになる。
 …でもその前に、どうしてもあっくんに言っておかなくちゃならないことがある。そう思って、唯は少しだけ後ろを振り返り、顔をぐっと、あっくんの顔に近付けた。

 ちゅ、と甘い音を残したのは唯の方。

「え?」
「…あっくん、ヤキモチ妬いて、ごめんね。お仕事のこと…なのに。だから、ごめんなさいの、…キス。」

 それだけ言い残すと、唯はあっくんに背中を向けた。こんなことを自分からしておいて、あっくんの顔なんて見れそうにない。

「…お前、それこそ今日一番の卑怯技だぞ…。」

 あっくんはそう呟いて、唯の身体を抱きしめる腕にさらに力を込めた。唯はというと、恥ずかしさで体を縮めている。
 そんな唯の耳元にそっと唇を寄せ、あっくんはとどめとでも言いたげに呟いた。

「ヤキモチ、妬いていいよ。その度に何度でも言ってやる。…愛してるよ、唯。」

 ドクドクと鳴る心臓をきゅっと押さえて、唯は目を閉じた。背中にあっくんの温もりを、これ以上ないくらいに感じながら。

*fin*
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