ラブ☆ヴォイス
「んで、また御堂なわけ?」

 そのまま不機嫌と書いているような顔で、光が言った。

「なによーその不機嫌そうな顔!」
「いい加減さー現実見ろよ。芸能人に恋とかすんな。」
「恋じゃないもんっ!」

 「ホントは恋だけど」と言えばますます機嫌が悪くなりそうだと察した唯は口をつぐんだ。」

「30円足りねぇ。出せ。」
「うわわわっ!ごめん。今出すね。」

 むすっとした表情で唯がお金を出すのを光は待っていた。そんなに怒んなくたっていいじゃん、それに呆れなくたって、と唯は心の中で呟く。

「光。」
「なんだよ?」
「呆れてる?」
「いつものことだからあんま気にしてねぇけど。でもとにかくあっくんあっくん言いまくるの、勘弁だ。華にも彼氏できたんだろ?お前、一人になんぞ。」
「うわー!それを言わないでよ!」
「だーから!現実見て現実に恋しろっつってんの。ほら、レシート。」

 『現実を見て』という言葉が妙に突き刺さる。今日何度も言われた気がする。
 現実ならば見ている。痛いほど、強く。どれだけ好きでも、本気で好きでも、壁は確実にあって、あっくんはとても遠い。

「ん。じゃ、気ぃつけて帰れよ。」
「うん…。」

 唯は買った雑誌をきゅっと抱きしめた。せめて、雑誌のあっくんとの距離は縮めることができるようにと、願いを込めて。

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