恋に落ちた、この瞬間。
ハシに持ったはいいが……。

口の前から一切、動かない。


……と、言うより。 まお事態が動かない。

ほんとっーに、嫌いなんだな。


「まお」


「食べるから…… ちょっと待ってね」


いや、まお。 違うんだけど。


そんな俺だって意地悪ではない。 “無理そうなら食わなくてもいい”って言おうと思っただけなんだけど……。

どうもまおは“ピーマン”一点に集中しているみたいだ。


「スゥー、ハァー」


深呼吸して、どうやら気合いを入れた。


ついに食う決心をしたみたいだ。

ゆっくりまおの口が開き、緑のピーマンが入った。


口を上下に動かしていくと同時に。 まおの顔が歪み始めた。



「うまいだろ?」


「苦いよー」


どうやらまおは“苦い”のが苦手みたいだ。


この調子なら“コーヒー”も苦手なんだと思う。



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