-短編集-『泡雪』


だけど。

木に囲まれた誰にも見えないこの場所で、こうして君と添い寝すると

あの日の夢が叶ったことをはっきり実感できる。


千切れそうに痛む耳も、

すでに関節が曲がらない指も、

完全に革靴の色が真っ黒く変わり、腫れ上がった足の指も、

まつげが凍りついて開かなくなった目も、

全てが届いていく。

先に眠った、君のもとに。


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