Dear...
「………あぁ、」

拾い上げると、それは写真だった。一枚は家族の写真、一枚は幼馴染のグループで撮った写真。

「こらこら、そんな女々しい物は見んな」
「いや、意外だと思って…」

何せ金色頭でピアス穴だらけの顔の不良の制服からそんなものが落ちて来るのだ。

「この頃は平和だったよ」
懐かしそうに言った孝司は、また、あの儚い笑みを浮かべていた。

「兄さんも、カナちゃんも、母さんも、いなくなった」
黒いTシャツ姿で笑っている孝司の兄さん。
ブランコに乗って楽しそうにしているカナちゃん。
この写真を撮ったのはきっと孝司の母さんだ。

…あながち間違っていないのかも知れないな、と孝司は苦笑した。

『矢島くんと両思いに〜』というあの噂だ。

彼が大切にしていたものは、尽く無くなってしまう。掌から、簡単にさらわれてしまう。握り潰してしまわないようにすればする程、波風がさらっていく。


「ま、お前は多分最長記録だよ、悠希」
「死なないように頑張るよ」
「お前が死んだら俺も死んでやるよ」
「馬鹿、それこそ情死になるだろ」
「そっかな」


最長記録、か。
大切に思われているという解釈でいいのだろうか。
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