愛しのマイ☆ドクター
『じゃあ あとは尿検査だから

お手洗いに行ってくださいね』



ぼくは岡崎さんをちらっと見た



察しの良い看護師の彼女は

既に検査用の紙コップを

用意していた



『はい じゃあこれ』

と岡崎さんが美羽に

コップを手渡すと

少しの間美羽はそれを

じっと見つめていた



『ねえ 先生』



美羽がいきなり顔を上げて

その大きな瞳で正面からじっと

ぼくを見つめたので

またどぎまぎしてしまった



『あたしなんの病気なの?』



『まだわからないね

だから検査するんだよ』



カーテンの向こう側で

心配そうに聞き耳を立てている

社長さんにも聞こえるように

僕は少し大きめの声で言った



『ねえ すぐに治るよね?』



どきどきしている心臓の鼓動を

悟られないように

できるだけ静かに言った



『うん もちろん』



だけどこのときの僕は

彼女の本当の病名さえ

知りはしなかったのだ
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