夢の住人

ボクは今日の20時45分に彼女に電話をする。



ボクなりの理由があった。

ゴールデンタイムの番組が終わり、全国のほとんどの番組が短いニュースを報道する。

あくまでも推測だが、この時が、一番これからなにしようかなと考える、間のできる時間だ。


それに今日遅刻したのも、意図的だった。

些細な事でも彼女との会話で話題を作りたかった。

それに1ヶ月もの間、朝の挨拶だけとは言え、寸分の狂いもなく、ボクは現れる。


1日ぐらい会わない方が彼女の警戒心も解けるんじゃないかと考えた。


怖がらせてしまったら、もともこうもない。

ボクは彼女の迷惑になりたくなかった。


彼女には好き人がいる。


奪ってやろう、なんて傲りは無く。


彼女と会話ができる。

それだけで十分だ。

下心は無いのか?
そんな質問をされれば、迷いなく、無いと言い切れる。


ただ、一つ欲を言えば
彼女の力になりたかった。


格好をつけた言い方になるが、彼女とその相手が幸せになるキューピット的存在になれれば幸せだとも思う。

これがボクが考えた計画の第二歩目だ。

上手くいくとは限らない。


でも、信じている。


世の中の迷える子羊達が教祖たて、拝む宗教のように。


1ヶ月前のあの時以来の電話。


あの時はお互いを知らなかったが、今は違う。


顔も声も姿形をお互いが知っている。


あと、自転車もか。


よし!

気合いを入れて

竹刀を振り抜いた。
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