心臓に悪い料理店
五話 とんでもない店員③ その1

常に静かな街はずれの店内は朝を迎え、店員達は開店の準備を始めていた。
開店後も静かで、客が来るという気配がまるでしない。
それでも、一日に常連以外の一見の客が二人か、三人はやって来る。
が、何故か客は食事前、あるいは食事中に脱兎のごとく店を出て行ってしまう。
料理は自慢というわけではないが、とても美味しい。
なのに何故、出て行ってしまうのか、ダニエルは理解出来ずにいた。
そのことを開店後も、相変わらずやって来ない客を待ちながら、ダニエルは先輩であるアルフレッドに聞いてみた。

「……ナイフの切れ味が悪いからだよ……」
 
天井に張り付いたまま、アルフレッドは呟くように答えた。

「はぁー、そうだったのですか! これで謎が解けました! ありがとうございます!!」
 
どういうわけか納得し、ダニエルはアルフレッドに一礼した。

「おい、ちょっと待て。何でそんな理由でお客が来ないってことになるんだよ! っていうか、ナイフの切れ味が悪いだけでお客が逃げるかっ!」

厨房から、今日の特選素材を買い出しに行っていた店員が、ダニエルとアルフレッドにつっこみを入れる。



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