そのオトコ、要注意。


大きく肩を落としていると、そこへ2つの人影が。


「あらあらあら。なんだか随分と面白い構図じゃない?」

ね、前園ちゃん?と環奈の隣に佇む、少し背の低い彼女は何故か放心気味。


「な、なんてこと…!」

持っていた両手の袋をドサッと落としたことすら気にも留めず、驚愕している前園ちゃんに、あたしにも緊張が走る。


「こんな素敵場面を見逃すだなんて……っ。この前園優花、一生の不覚ですッ」

下唇を噛みながら、悔しそうにそう漏らした。


(ま、前園ちゃんてば…)

充分見てるじゃない…、なんてことはとてもじゃないけど言えそうになかった。

環奈は尚も楽しげにあたしたちをしげしげと眺める。

「それにしても。いつからそんななのよ〜」

その調子で総合優勝までまっしぐらー…なんてね、と悪戯っぽい笑みを浮かべる。

(……。完全にからかってるな、これ)


「余裕だろ」

急に耳の近くから低い声がしたからはっとした。

顔の確認はできないから確かじゃないけど、有栖川ルイがニヤリと笑った気がした。



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