そのオトコ、要注意。


「…ちょっと!」

突如大きな声を出したあたしに視線が集中する。
もちろん、有栖川ルイのも。


「〜〜っ!いい加減にしてよ…!」

勢いよく有栖川ルイの腕を払う。
予想外にすんなりと抜けることができたせいで、拍子抜けしそうになるが、ぐっと堪えた。


「来て」

「どこに」

「いいから」

そう言って腕を取り歩き出す。


(こんな中じゃ落ち着いて話もできやしない!)


「あらら。ご両人どちらに?」

せっかく差し入れ買ってきたのに、と袋の中のジュースを見せられる。


「すぐに戻るから」

環奈にそう告げると、有栖川ルイを引っ張って行った。


「悪いな、あと頼む」

「えっ、あ、うん…」


有栖川ルイが環奈に苦笑するのが聞こえた気がした。



「……ちょっとやり過ぎたかしら」

「え?」

「さっきの。調子に乗りすぎちゃったみたい。あの子、なんだか……」


差し入れを配る環奈と前園ちゃんがそんなやりとりをしていたことを、あたしは知らない。



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