夢列車
ガラス越しの翔。

私は言い切れぬ寂しさを感じていた。

わずか30分の出会い。お互いを知るにはあまりに短い時間だ。

それでま私は翔の夢を知ることが出来て、翔は私には大切なことを教えてくれた。

もっとも、未熟な私には実感もなければ、どう大切なのかも分からない。

それでも、大切なことであることだけは分かった。

そして、今の私にははっきりと言えることが1つある。

今日のことは一生忘れない。

それだけは、間違いなかった。

私はもう一度、翔に声をかける。

「また、会えるよね?」

ガラス越しで聞こえるわけがない。

私は笑って手を振る翔を目に焼き付けようと、じっと見つめる。その姿が、少し歪んだ。

列車が動き出す。

「――――ッ!」

そのとき、確かに見た。

列車が駅から遠ざかる。それでも、さっき見たものが目に焼き付いて離れない。

それは翔の最後の姿。

最後の言葉。

ガラス越しに聞こえるはずのない言葉だ。

確かに私は翔の声は聞いていない。

だが、翔の唇の動き。

それだけで、言葉が、伝えたいことが、伝わったのだ。

《会えますよ》

頬に熱いものが流れた。
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