Bremen

砂塵舞う荒野

 
……街を出て、再び独り旅路につくバード。
カンツォーネの国土の大半は砂漠と荒野であるため、突風が吹く度にバードの横っ面を風に混じった砂が叩いて行く。


「………嵐が、来るか?」

帽子の鐔を引き下げて顔を覆いながら、バードは視線を空に向けた。
巻き上げられた砂が風に舞い、天への螺旋階段を作り出している。
竜巻が起こる前兆だ。


「仕方が無い。
街に戻って宿を探すか」

今日の旅を諦め、踵を返して街に戻ろうとするバードだったが……
何者かの気配を近くに感じて歩みを止めた。

「………何だ。
ただの追い剥ぎか」


足を止めたバードの回りを、いかにも『盗賊です』といった身なりの男が数名で取り囲んだ。
彼らの手には短剣……
しかしそのグリップ部分はハーモニカという、奇妙な武器が持たれている。


「ぃよお、兄ちゃん。
身ぐるみ置いて行きな!
言うことを聞かないと、その耳を削ぎ落とすぜ」

小悪党どものリーダー格が決まり文句をバードに浴びせる。
しかし普通なら『有り金』と言うべきところを『身ぐるみ』と言うのは、この世界ならではの言葉なのかも知れない。



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