忘却は、幸せの近道
「えっ?」


「さっきまでは、医者としての対応。
まあ、ちょっと違う部分もあったけど。
今からは、同じ被害者同士として。」


先生は、ぎこちなく笑った。


同じ被害者同士?


嘘でしょ?



「私も梨依ちゃんと同じなの。
まあ、私の場合は、途中で助けて貰ったから、最後までは、されなかったんだけどね。
けど、同じ恐怖は味わったからわかるわ。」


私は、明るく振る舞う先生にそんな過去があるなんて信じられなかった。


「私....」


私は、それ以上何も言えない。


苦しいのは、私だけじゃない。


それだけが、勇気になる。


「私、がんばります。
だけど、家族には....」


みんなには、秘密にしたい。


だって、少しはみんなの悲しみが減るでしょ?


大丈夫。


私、がんばるから。


だから、みんなは幸せだけを考えて。
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