ささやかな奇跡
「私が間違っていたのです。蓮のことが大切で、あまりに愛しくて、蓮の言葉に耳を貸すことをしなかった。本当は、何があっても、手放すべきではなかった。一緒にいることが、ただ一つの願いだったのに……」

続く言葉を飲み込んで、高耶は足元に転がっていた血塗れの刀を握り込んだ。

「私は殺生を犯しました。この場で破門して下さい。蓮が救われないのなら、救いを求める意味もない」

「高耶、やめろ!」

刀がきらりと一閃し、慈尊は声の限りに絶叫した。

無駄だとわかっていても、叫ばずにはいられなかった。
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