―百合色―
ゴホゴホと百合から出る咳の音で徐徐に現実に戻ってくる。


『大丈夫かよ?』


俺はゆっくり百合に近付いた。

『だめぇ…光輝も風邪になっちゃうよ?』


真っ赤な頬をした百合が、俺を必死に止めようとしている。


それでも俺は百合に近付いた。


そして、百合の顔がよく見える位置まで、体を操る。

『ごほっ…あぁ…デートしたかったぁ…』


俺は百合の頭をそっと触り、撫でた──……


『デートなんていつでも出来るよ、それより今はゆっくり休めよな?』


そう言うと、
百合は俺を見て笑った。


『あぁ…そんな顔すんなよ、止まらねぇじゃん…』


百合のさっきの笑顔は、
ストライクど真ん中だ。


撫でていた手がだんだんと百合の顔へと下がっていく。
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