―百合色―
先生は廊下の隅の方へと歩いていった。


俺もその後をついていく。

ペタペタと俺のスリッパが歩く度鳴る。


俺の歩き方が悪いからだ。

静かな廊下に、
俺がわざと出す音で響く。


『お前、どうしたいんだ?』



…いきなり言われても?


『何が?』


こう答えるしかない。



『お前、高校行くのか?
行かないのか?』



またその話か。


最近先生は、俺にその話しかしない。


俺は今年受験生だ。

先生が言うのは仕方ない。


『行く気がしない』



先生に言われても、
いつもこの答えを返す。


受験なんて、考えてもいない。


まして、高校の事なんて──…


はっきり言って、


どうでもよかった。


『高校はちゃんと行け。
将来苦労するぞ?分かったな?以上だ』



『はいはい』


今はまだ5月。


時間はたくさんあると思ってた。
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