社長のご指名
やっと紗衣の意識が戻った。





この日が来るまでほんの数週間だったのに異様に長く思えて、毎日祈るしかなかった。





また、“まま”って呼んでくれた。





私を見てくれた。





紗衣が生きてる。





もう、嬉しくて……幸せで……





「紗衣、まま…いる、からね。」





溜まった涙が溢れ出して止められない。





今すぐその小さな体を抱き締めてあげたい。





―――――――――長かった。





紗衣の声が聞きたかった。





“まま”って呼んで欲しかった。




一生分の恋をして、ありったけの愛を貰って、死ぬほど痛い思いをして産まれた小さな小さな紗衣。




産まれたばかりの紗衣を見て、命をかけて守るって誓ったのに、私は守れなかった。





祈るしか、祈る事しか出来なかった。





その思いが、やっと届いたの。




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