僕等が保つべき体温の最大
「なあ、結衣」

圭一は結衣に向き直ると、静かに声をかけた。

「聞いてくれ、結衣」

結衣は、ずっと昔からそうして来たように、真っ直ぐ圭一をみた。

夜はやたらと静かで、それが薄い布でくるまれているように心地がいい。

「ずっと気付いていたような気もするけど。でも、今やっと気付いたんだと思う」

気持ちを口に出すのは、簡単なようで凄く難しい。

養ってきた分だけ、培ってきた分だけ、口に出すと壊れてしまいそうで、戸惑ってしまう。

”結衣と作る未来を…”

圭一は改めて決意を固めた。

「結婚して欲しいんだ」

滑り出した言葉は、そのまま床に落ちてしまったようで。辺りはちょっと前と変わらない時間が流れた。

「結婚して欲しいんだ。俺と」

静かな時間は相変わらず流れる。

過去と未来の線分をすべらかに通り過ぎる。

そんな静寂の中で、結衣は微笑みながら小さく頷いた。

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