僕等が保つべき体温の最大
それは、真っ白な紙にポツンと打たれた点のように思えた。

小さく穿たれた点は、例えば雨風のようなものの前では限りなく無力だろう。

空気中に浮かぶ様々な光の前で限りなく無色だろう。

しかし、確かに刻まれたのだ。

時間は過ぎるし空間は拡がる。でも、しるしは確かに刻まれたのだ。

圭一は、ここに立って初めて喜びを感じる事が出来た。

結衣と”生きる”人生。

それさえあれば全てが満たされる。

今がどんなに苦しくても。例え未だに未完成でも。

二人は今確かに約束をした。二人で生きていく未来を。

圭一は結衣を抱きしめた。

結衣はひたすら微笑んでいた。

”体温が…”

圭一は、久しぶりに自分の体温が上がっていくのがわかった。

保ち続ける事など出来ない。上がっては散らばり続ける体温を感じていた。

それは、自分が求めてきたものの様に思えたし、少し違う様にも感じた。

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