群青ノ春
いくら十年前の恋人であっても、自分が付き合った相手が結婚しているかどうかと言うのはあまり知りたくない事だった。



ましてや、別れてからも未練があった相手となれば尚更の事だ。




「紗英ちゃん、落ち着いてー。


陽登もおじさんだし、子供の一人や二人いるよ〜」



なんて本心では無い事を言ってみたりした。





「え〜そうですかー？子供がいるようには見えないけどー…」



紗英子は全く納得してない顔でジントニックをぐいっと飲み干した。




奈緒は胸がざわつくのを必死に隠すように、ヘラっと愛想笑いを顔に張り付けていた。






カウンターの中でコースターを整理しながら陽登は言った。



「子供なんていませんよー。俺は独身です。




最近は彼女もいません。
悲しき30代なんですよ」






「ホラァ！あたしそーいうの結構当てますもん！」


紗英子は隣で自分の分析力にｷｬｯｷｬとはしゃいでいた。





奈緒は陽登のそのセリフ以降の会話はすごく遠いBGMのようにしか聞こえなかった。
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表紙・目次

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